痛快なストーリーで一気読みしたのだが、あとで考えてみると複雑な気持ちになった。主人公の中学生は抜群に優秀で、この子なら逆境でも大丈夫!と安心して読み通したのだが、「頭脳明晰すなわち善」という物語を読んだのは、ずいぶん久しぶりであることに気がついた。開成から東大というエリートコースとは無縁の読者であっても、感情移入ができてしまうのは、誰しも自分のことを本当は賢いなどと自惚れているからかもしれない。タイトルである恵子おばさんの最大の魅力もまた北大医学部合格という頭脳明晰さである。人間性は頭脳に比例するという著者の考えが色濃く反映された作品なのか。