鮫島有美子の四季

全部で79曲ですか? これだけ古今東西の歌曲が春夏秋冬でカテゴライズして揃えられていると、コンサートのプログラムを組む際の資料として役立ちそうです。もっとも、ショパンの「別れの曲」が春にカテゴライズされているのは堀口敬三氏が後付けで「春の日・・・」から始まる歌詞を付けたからだけに過ぎないと思えるので、ややこじつけ感はありますが。
それから、一般に日本語で歌を歌う時の問題点として、どうしても助詞、いわゆる「てにをは」が拍子の第1拍目に来ることが多いのですが、音楽的にはここは強拍なので、不注意に強く歌ってしまう歌手が結構多いのです。日本語を大切にするなら、ここは軽く歌わなければならないのです。鮫島さんは問題なくクリアしています。それから「ガ」行の音は、言葉の頭に来るとき以外は鼻濁音にして柔らかく発音するのが原則なのですが、これもきちんとされています。
好き嫌いは別にして、余り好きな表現ではないけど、いわゆる教科書的な歌い方をされているのではないでしょうか。
あと「エーデルワイス」では福井敬さんが共演されていますが、私もオペラの舞台でご一緒したことがあるのですが、力強くてそれでいて角の立たない柔らかな声をお持ちのとても良いテノール歌手です。
ひとつだけよくわからないのは「ホワイト・クリスマス」が変ニ長調で歌われていることです。原曲はニ長調で、作曲者が必ずこの調で歌うことを条件にしていたと記憶していますが(おそらく宗教的意味合いからだと思います)、原調で歌っても音域的に全く問題ないはずなのに、なぜわざわざ♭が五つも付く難しい調に移したのか謎です。細かい話なのでどうでもいい、と言えばそれまでですが。
ロシア民謡がまるで演歌みたいだったのはちょっと残念でした。
あと個人的には、曲によってはソプラノではなくアルトの音域の方が似合うんじゃないかな、と感じるものもありました。