銀魂’ 11(完全生産限定版) [DVD]

本巻の中心は「バラガキ篇(全4回)」前半2本(244・245話)である。

第2期アニメ中、真選組メンバー随一の見せ場を一篇挙げるならばこの「バラガキ篇」になると思う。万事屋に比べどうしても出番の少ない彼ら
、特に2期ではギャグ要員としての出番が多く、その姿からつい忘れがちになる武装警察としての凛々しさを久々に堪能させる一篇だ。
本篇では特に副長・土方にスポットが当てられ、長い銀魂史上で初めて明かされる彼の生立ちの秘密、自らの小姓となった鉄之助を厳しくも温
かく見つめ鍛え上げる兄のような姿等、普段の「鬼の副長」とは一風異なる側面も描かれ、彼のファンは必見である。

本篇でのキー・パーソンが二人いる。まず真選組のライバルとも言えるエリート警察集団・見廻組局長、佐々木異三郎。名門・佐々木家の嫡男
で文武共に超一流のサラブレッド、一方自らの足を引っ張る存在は容赦無く切り捨てる冷酷さを持つ。彼のCVに抜擢されたのがベテラン・森川
智之氏、淡々と知的なトーンの中に時折好戦的な狂気を覗かせる演技だ。もう一人が、異三郎の腹違いの弟であり、真選組に預けられた妾の
子・佐々木鉄之助。前半でのBボーイ風悪ガキと後半での一徹な青年のギャップをCV伊藤健太郎氏が好演。声優陣に無茶振りを強いることの
多い銀魂らしく随所で挟まれるラップも軽々と乗りこなす。
今後宿命のライバルとなりそうな異三郎を、バラガキ田舎侍・土方として迎え撃つ中井和哉氏の演技にも注目。土方から異三郎へ向けられる宣
戦布告の台詞「あいにく、俺のフォルダの区分はバラガキしかねぇんだ」を聴いた際、心底アニメ化が実現して良かったと震えが来た。

第2期アニメ最後の長篇であり、予告編からスタッフの気合の入り様が伝わった本篇だが、名作四天王篇に劣らぬ仕上がりである。まず映像、前
半のギャグ展開と中盤〜後半のシリアス展開の空気の違いを色彩と明度で見事に描き分ける。終盤の決戦シーン、戦闘の様子を一見で判断が
つかぬ程の暗がりで表現、戦いの緊迫感が強く伝わる。また土方の幼少期の回想シーン、義兄・為五郎との優しい想い出、一転土方の心を閉ざ
したある事件の悲しみ等、土方の心情をそのまま絵に映した様な描写の美しさが目に強く焼き付いた。
また音楽、いつも遊び心溢れるBGMを制作するアニメだが、今回も鉄之助のBボーイ振りをアピールすべく制作されたヒップホップ調BGMが良く
出来ている。特に鉄之助チームと銀さんが路上でディスりあうラップ差し合いシーンは音付きになったことで面白さが格段に増した。

追記…特典のラジオCDについて概略のご紹介を(若干ネ.タバレになるのでご注意)。全1時間程の尺でアクトは最早定番となった杉田・阪口コン
ビ。冒頭のお便りコーナーでは、1年間走り抜けた第2期アニメ全般の振り返りを中心としたトーク、長谷川の名曲「ダンボールの神様」を始めとし
た挿入歌をフォーカスした話題や、銀魂声優陣で遊びに出掛けた際のエピソード等も聴ける。
メインとなる「坂田のまんま」コーナーのゲストは、土方役の中井氏が2回目の登場。おふざけの勢いのみで突っ走った印象のある前回よりも慣
れた雰囲気で、笑いを交ぜつつバラガキ篇収録時の賑やかなスタジオ風景等をしっかり伝えてくれる。印象深いのが今回初めて過去が明かされ
た土方につき中井氏、白夜叉を名乗った銀時につき杉田氏双方の考えが聴ける部分。銀魂では声優陣の対談がどうしてもおふざけの方向に向
かいやすいので、ここでは役者がキャラクターに持つの素の印象が伝わり嬉しくなった。余りラジオ等に出演されない中井氏、お悩みコーナーで
は子を持つ父親としての表情もぽろりと覗かせる等貴重な内容となっている。

ファンとしては是非第3期実現によりアクト2人の絶妙な掛け合いトークを再び聴きたい。本篇・特典共に真選組ファンには特に薦められる。