ひとり暮らし [DVD]

（ネタバレ注意）
「ひとり暮らし」大人が観てもいろいろな事を考えさせられる深いラヴストーリーである。それは何故かというと、美歩（常盤）の恋人、新谷（高橋）がこのドラマではバツイチの女馴れした成人の男性をキャストにしていることである。
　例えば新谷を美歩が車で家まで送る際、道端で死んでいる猫を拾い、それが廃棄物として捨てられると知った時の美歩がみせる涙のシーン。ここで注目すべき点は、日本が持つ特有のヒューマニズムが表現されているところである。その後新谷が初めて美歩とキスをして、初めての夜を共にする…
そして新谷の忘れられない台詞、「人が好きなら、その人の気持ちと関係なく好きでいられるんじゃないかな…」これは相手に見返りを求めない”無償の愛”を簡潔に言い表した言葉である。そんな台詞をさりげなく言える新谷がカッコイイ！
それから恭子（永作）と美歩が昼食中、間接キスをするシーン、うそつきゲームのシーン、千勝が「なんで美歩さんを泣かせるようなことするんですかっ」と新谷を殴りつけるシーン、美歩が久しぶりに実家に帰り、親の食事を食べて涙するシーン（この気持ちは一人暮らしの経験がある人ならよく分かる！）そして、「私もう疲れちゃった」と美歩が言い、二人涙を浮かべながら敬礼して別れるシーン。どれも人の心を揺さぶる印象的なシーンであるが、このドラマの特徴でもある恭子が美歩に異常なまでの執着を抱くシーンは、視聴者をハラハラさせるが、それをも許容する美歩の包容力は圧巻である。そして最後に美歩が新谷と別れる際の台詞。
「私、決して雨が降らない場所を見つけた。それは自分の心の中、そこはいつも晴れている…ずっと永遠に晴れ。」
これほどまでに清々しい言葉があっただろうか、そしてこんなにも人の心を啓発するヒロインがいただろうか、それは”常盤貴子は、常盤貴子だから・・・”これはトートロジーに過ぎないかもしれない。しかしこれは、彼女の人間性そのものに人をひきつける所以があるのである。
　天性の美貌と時折見せるユーモラスな仕種、ドラマ「ひとり暮らし」は、初期の「愛していると言ってくれ」よりもひと皮剥けた、誠実な常盤貴子の魅力が遺憾無く発揮された作品でもあり、彼女の連ドラ作品群の中でもとりわけこれがオーソドックスな作品であると言える、連ドラの女王を示唆する意味でも、極めて重要な作品であると位置づけられることが出来るだろう。
常盤のファンならずとも感慨無量の傑作である。