刑事告発 東京電力-ルポ福島原発事故

題名から刑事告発に関する内容が主かと想像していましたが、実際は東京に居た著者が３．１１から見た原発事故と生活への影響、報道の問題ぶり等が時系列で書かれています。

東京からの視点だけでなくもちろん現地入りしたルポもあり、桜井勝延・南相馬市長の話は鬼気迫るものがあると同時に、東京電力の非道ぶりが浮かび上がります。特に原子力災害対策特別措置法第十条違反は、東京電力から免許を取り上げることに匹敵する重罪です。これで柏崎刈羽原発の再稼働など、あってはならない事です。

事故以前から原発に関する危険を警告する書籍を刊行していた著者だけに、取材対象となった御用学者への突っ込みの鋭さは凄い。本書でやり玉に挙がったのは、衣笠善博・東工大教授（当時）、神谷研二・原医研所長、入倉孝次郎・京大名誉教授。特に、神谷氏が原医研で行ったずさんな実験によって、過度の被ばくに曝された原医研職員やアルバイト女性の話は身の毛が弥立ちます。その神谷氏は、今や福島県立医科大学の副学長だとか！あいた口がふさがりません。

なお、著者から福島などで高線量被ばくされた方にアドバイスとして「抜けた歯を保存しておくように」との事。プラスチック容器以外、紙やビニール袋に入れて保存して、後の裁判に備えようという事ですね。

また、著者が２０１１．３以来都内で使用していた浄水器（米国製シーガルフォー http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss_1?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Daps&field-keywords=%83V%81%5B%83K%83%8B%83t%83H%81%5B ）のフィルタを、７月に京大の小出助教に分析を依頼した所、フィルター１個当たりセシウム合計５１．６ベクレルが検出されたそうです。他にもカリウム４０が２５３、ビスマス２１４が８０、アクチニウム２２８が４０．７ベクレルが検出されたとのことで、浄水器もそれなりに放射性物質除去に効果があるようです。

検証 福島原発事故・記者会見――東電・政府は何を隠したのかと合わせて読むと、当時から２０１１年末までに私たちがどのような情報を得ていたのか良く思い出せます。

報道の問題は既に多くの人によって伝えられておりますのでここでは省きますが、本書で語られている例もまぁ酷いですね．．．

それにつけても「ただちに影響はない」「２０ｍＳｖ／年まで大丈夫」といった政治や行政機関の罪深さよ。